こんにちは。
ゆるはすです。
FE250とTE250iの2台を生贄に召喚したFE450。
車検を取得して普段使いや軽いツーリングにも使用し、ついでにエンデューロ遊びデビューも済ませてきちゃいました。ということで毎度お馴染みのインプレ記事を書いていきますよ。
はじめに
何はともあれ書き手について紹介します。
同じ車両のレビューでも書き手がプロと素人では意味が違ってきますからね。
私は「ハードエンデューロ中級者」です。
唯一参加しているレースっぽいイベントはCGCで、順位はさわやかクラスの真ん中よりちょっと上くらい。そろそろゲロゲロに出てもいいよねってくらいの技量です。身内でワイワイエンデューロ遊びをたまにしていますがガチることは無く、ゆるゆるやっている程度。
今までWR450F、FE250、TE250iと複数台のエンデューロレーサーを乗り継いできて、全てほぼ普段使いで乗ってました。近所への買い物、軽いツーリングが8割でオフ遊びが2割くらいかな。
そんな万年中級者でエンジョイ勢な私がFE450を乗ってみてどうだったか。
嘘偽りなく書いていきますよ。
車両スペック
さて、今回紹介するのはこちらの車両。
HUSQVARNA FE 450 2019。
ハスクバーナが誇る4ストロークエンデューロレーサーのうちの1台で、排気量は449cc。FE501(510cc)に次ぐ2番目に大きなモデルです。ちなみに2020からフルモデルチェンジしているので一個前の型落ちです。(2022年現在)
ご存知の通りハスクの車両はKTMのものと大部分が共通であり、FE450はKTM 450exc-fと対になっています。基本スペックはほぼ同じですが、サブフレーム周りの素材、サスペンションなどなど結構違いがあります。
車両のカテゴリーとしてはKTMのEXCシリーズと同じく「公道走行も視野に入れたエンデューロレーサー」です。ですので問題なくナンバーを取得でき、車検だって普通にとれちゃう。合法的に公道を走れる数少ない大排気量レーサーです。ハスクバーナが作ったCRF450Lと思えばイメージしやすいかもですね。
エンジン
SOHC 4バルブ 単気筒エンジン。
燃料供給はFiで、ミッションは6速です。
同排気量のモトクロッサー、FC450とほぼ共通のもの。
特徴としてはSOHCってところではないでしょうか。国産の450レーサーは基本DOHCであるあたり意外に感じる人もいると思います。理由は腰上の軽量化、また排気量があるから回さなくても走れるし高回転は必要ないって背景もあるかもですね。
気になる最高出力は後軸測定で35馬力ほど。
…え、さ、35馬力!?低くない!?
と思うかもしれませんが、これは規制を通す為のデチューンが施されている状態での数値らしいです。吸気にリードバルブが付いてる(!?)とか、排気が絞られてたりとか。
これらを除去してマップを書き換えることでフルパワー化することが可能です。KTMディーラーのブログを拝見したところ、同じエンジンを積んでる450exc-fの最高出力はメーカー公称で56.5馬力とのこと。フルパワー化を施したFE450も同等と思われます。
で、実際に乗ってみるとですね…これがとっても扱いやすいエンジンなんですよ。めちゃくちゃ良く調教されていると思います。
アクセル開度が小さいときはパワーの立ち上がりがかなり抑えられていて、発進した瞬間「あれ?全然パワーなくない?」と錯覚してしまうような、まるで4st250クラスかのような穏やかなパワーの出方をします。加えて自分が今まで乗ってきたレーサーと比べて段違いにクランクマスがあり、低回転域の粘り、ストール耐性は4st250クラスとは別次元。アクセル触らずクラッチだけで3速発進できちゃう。
これらの要素が合わさり450レーサーという肩書きからは想像もできないほど扱いやすく、まるでちょっと大きめなトレールバイクのように気軽に乗れてしまいます。デュアルパーパス色がかなり強い。
ただ、大人しいのはアクセル開度20%まで。
アクセルを開け始めると途中から排気量が変わったかのように急激にパワーが出始めて(マジで途中から変わります)、な~んだ大してパワー無いじゃんこいつ!と勘違いしているところを排気量の暴力で引っ叩かれ「すいませんでした、貴方は450です」と理解(わか)らせられます。本当にエグいくらいパワーあるので、全開なんて怖くてできたもんじゃないですよ。よくて半開です。
またパワーの出方が抑えられているといっても低回転域からがっつりトルクがあり、とにかく楽ができてしまいます。2st300のレーサーとタメを張れるくらいに下からモリモリトルクが湧いてきます。
どの回転域でもアクセルを開けたら開けた分だけパワーが出る、と聞けばピーキーな印象を受けるかもしれませんがそんなことはありません。パワーの出方はビンビン系ではなくドロドロ、ドバドバ系という感じで(伝われ)、あくまで扱いやすいフィーリング。それゆえ走り方は250クラスのようにクラッチを使って回転数を上げパワーを引っ張り出すのではなく、スロットルだけで調整する感じになります。求めよ、さらば与えられん。全てはそこ(右手で握るスロットル)にある。
マイナスポイントとしてはパス止まりがごくごく稀にあります。
低回転域でドコドコ走っている際、アクセルを開けるタイミングが悪いとごく稀に不完全燃焼?が起きてるのか変な爆発があって、それをきっかけにバスッとエンジンが止まってしまう、ということがあります。本当に稀にですが。大排気量故の問題なのかどこかの不具合なのか…。まあ、250クラスと違ってギアがロングなこともあるので、ハードめな遊びをするときはそこんとこ気を使う必要がありそうです。
シャーシ
鉄のメインフレームに樹脂とカーボンを組み合わせた複合素材のサブフレームを組み合わせ、脚はお馴染みのWP製。基本的に以前乗ってたTE250i 2018と共通です。
2019年のFE450の大きな特徴として、前モデル(16年以前)と比較して6㎏減という大幅なダイエットを達成しかなり軽量なマシンになっている点があります。半乾燥重量で108.8㎏です。モデルチェンジ前のFE350よりも軽いんですよ。自分が前乗っていたFE250 2015と比べてもたった1kg増。すごい。
ヨンゴーと聞くとほとんどの人が「重くて無理」と諦めてしまうかもしれませんが、このFE450に関しては本当に軽く誰にでも乗れるマシンになっていると思いますよ。実際に乗っていて公道ではこれ以上ないくらいヒラヒラ、未舗装路を走っていても「重い!!」と不満に感じることは滅多に無いです。
ただ誤解しないで欲しいんですが、他のレーサーと比べれば普通に重いです。たぶん全てのエンデューロレーサーの中で最重量級。これより重いレーサーってFE501しかないんじゃないかな。斜面で谷側に倒すと結構やばいです。
電子制御
17年以降の全ての排気量のFEシリーズにはエンジンの出力特性を変更できるマップスイッチとトラクションコントロール(以下TC)が標準装備されています。FE450にも標準装備。2stモデルにはTCが無いので、これは4stモデル独自の強みとなります。一応ローンチコントロール機能もあるんだけど…まあモトクロスしない限り縁は無いですね。自分は使ったことないです。
マップ1がスタンダード、マップ2がアグレッシブ。これは乗り込むと結構違いが分かって、マップ1だとアクセルを開けた時の"ツキ"がちょっとダルくなります(これを忖度モードと勝手に呼んでます)。マップ2はそれが無くなってシャープにパワーが出るようになる。
公道ならマップ1でいいと思いますが、オフ走るときはマップ2の方が好きですね。中途半端な遠慮は必要ない、開けたら開けただけすぐにパワーが出る方が扱いやすい。アクセルだけでパワーを調整できるエンジンなのでこっちの方が相性がいいと思います。
TCに関しては搭載しているオフロードレーサーは少ないので馴染みのない方が多いかもですね。このTCはアクセル開度に対する回転数の上昇スピードからリアタイヤの滑りを検知して、それに対し点火タイミングを変更してグリップを回復させる…というものらしいです。滑りだしたらパワーが落ちる、という理解で多分合ってます。
450の特大のパワーを路面に伝えるにはTCはとても有効なんですが、逆にマイナスに働く場面も多くこれが一長一短といった具合なんですよね。
例えばクロカンのように止まらず走り続けるような場面だったり柔らかい路面のヒルクライムだったりはTCが抜群に良く働きます。一方でTCが自分の意図とは異なる挙動をして逆に邪魔になることもあります。ガレ・ロックなんか特に顕著で、TCが掻きを検知してパワーダウン→急激にグリップが回復する、ということが連続して発生しワケワカランことになります。ヒルでは「ここだ!」というタイミングでアクセルを開けてもTCが働いて地面を掻けずフロントが上がってくるとか。場所によって切り替えるのが吉ですね。
走行レビュー
さてそんなFE450をツーリングからハードなオフ遊びまで一通り使ってみたので、それぞれ用途別の感想を書いていきます。
オフロード
・フラット系
まずはフラットな林道など軽いオフロード走行についてなんですが、「これより良いマシンって存在するのか?」ってくらい最高のマシンです。いや、マジです。
とにかくキモチええ!!
車重は軽く足回りも高性能、エンジンはトルクもパワーもあるのでどんな場面にも対応できてしまい隙が無い。本当に不満が無くて書くことが無いんですよ。
低回転を中心に使えばパワーは出過ぎないし、4ストロークエンジン特有の路面を掴むようなトラクション性能でどこからでも加速できる。コーナーをバ・バ・バと大股で蹴り抜けて、その先の立ち上がりはヨンゴーの特大のパワーでかっ飛ばす。その時TCをオンにしていればラフなアクセルワークでもスライドが最小限に抑えられて恐怖感が無い。なんだこれ、反則だぞこのマシン。
唯一マイナスポイントを挙げるとするなら、アクセル全開を楽しむ機会が限られてしまうことでしょうか。このバイクでアクセル全開にしようものならどこまですっ飛んでいくか分かりません。アケアケの楽しみを重視したいなら250クラスのがベターですね。
・ハード系
CGCなどで使われるようなハードなオフロード。
全然いけます。もしかしたら以前乗っていたFE250より総合的には強いかもしれない。
ヨンゴーでハードなんて絶対向いてないでしょ~と思っている方が多いかと思いますが、ここはハッキリ言い切ります。250クラスや2stなど軽量級のレーサーと遜色ないレベルでハードな遊びをすることができます。
自分が気に入っているのは強烈なトラクション性能です。
4ストロークは2ストロークと比べて、エンジンのトラクション性能で有利なんですよ。その一回の爆発ごとに地面を掴んで蹴るような感覚が250クラスよりもかなり強いです。特にちょっと低めな回転数を使うとこれをより強く感じられるんですが、250クラスだとパワーが負けて失速してしまうところをヨンゴーならパワーが負けず、低回転を維持しながら走れてしまう。250クラスよりも4ストロークの強みを活かせる場面が多いんです。
そのおかげでヒルクライムなんかは無類の強さを誇ると思いますよ。
M5Bを履かせて力任せに地面を蹴っとばしながら走りましょう。
ただ小排気量レーサーより明確に劣る点もあります。
重いことは勿論なんですが、個人的に熱問題の方がネックになってくると思います。
大排気量故エンジンから発せられる熱が250クラスの比ではなく、常にジリジリとした熱さを足に感じます。オフロード走行時には移動路を含め常に冷却ファンが回り続けてました。一緒に走ってた同じヨンゴーのRM-Z450なんて事あるごとに冷却水噴いてましたから。まあアレは例外な気がしますが。
純正では右側にしかラジエータファンが無いところ、自分は左側にもファンを増設しています。そのおかげかまだ噴いたことは無いのですが、いつ噴くのかとヒヤヒヤしながら走っています。特にイゴなんかはかなり早く限界を迎えてしまうのが確実なので、止まらずに早く駆け抜けてしまうことを意識する必要がありそうです。
まとめると持ち前のビッグトルクを活かした高い走破力があるけど、重さと熱問題から失敗したときのリカバリーがキツい、ハイリスクハイリターンバイクという感じですね。上手く走らせるのが難しいけどリカバリーが楽ちんな2st125と比較すると真逆の性能かも。ちょっぴりピーキーなので、初めてのレーサーとしてはオススメできません。
オンロード
ここではオンロードでの性能というよりツーリングでの実用性について言及していきます。実際ツーリングに使ってどうなんだよって話ですが…
ツーリングには向いてません。
「振動が大きい」
「シートが固い」
「積載性ゼロ」
他のレーサーの例に漏れずこれらの要素が大きな足枷になります。特に振動に関してはわりと致命的なレベルで強く、ハンドル、シート、ペグを通してキツめな振動が伝わってきます。ハンドルの振動はPHDSを導入することである程度緩和可能ですが、多分スマホをマウントしたら一撃でカメラの手振れ補正機能が死にます。ツーリングをメインに使用するのであれば他のトレールマシンやアドベンチャー系の車両を買った方が確実に幸せになると思います。
ただし、「エンデューロレーサー」というくくりの中で評価するのであればツーリングに適している部類に入ると思います。何故ならパワーがあるから。
FE450はどの回転域でも滅茶苦茶にトルクがあり、かつクランクマスが大きくトルク変動が小さめなので低回転でも楽に巡行することができます。現在のギア比は15-48で、この状態で気持ちよく巡行できるのは90㎞/h前後というところでしょうか。100km/hでも全く問題ありません。250クラスと比べたらかなり巡行しやすいです。また回さないで走れるので思ったより燃費も優秀。ツーリングであれば30km/L弱は確実に走ってくれるので財布にも優しい。
大排気量だしもっと高い速度域でも巡行できるんじゃないの?と思うかもしれませんが、あんまり期待しない方がいいです。車体が軽すぎてスピードを出すとフワフワと安定しないので、結局そんなにスピードを出す気にはならないです。とんでもないスピードを出せるパワーはありますが、まあ出しても一瞬ですね。
また特筆すべき点として、耐久性の高さが挙げられますね。
350とか500って普通の人間ならアクセル全開に出来ないだろうから、逆にエンジン長持ちみたいな説ある?
— よっしー (@forza_milan05) 2022年3月23日
めちゃくちゃ有る
— AD/tac (@tac69) 2022年3月23日
公道バイクも大排気量ツアラーの方が寿命全然長い
回さないで走れてしまうことからエンジンへの負荷が少なく、それゆえ250クラスと比べメンテナンスサイクルを長くとれるそうです。AD/Tacさんが言っていたので間違いありません。海外の掲示板でも「そろそろ走行距離3万マイル(4.5万キロ)だからバルブクリアランス見ようかな」とか言ってる人もいました。
「公道でレーサー走らせたい!」という方は大排気量も選択肢に入れてみると良いと思いますよ。
車検という足枷
FE450はご存じの通り車検を取得する必要があります。
ここが250クラスとの大きな違いであり一番のネックだと思います。これさえなければ国内でも250ではなく350が主流になるんだろうなあ…
「そもそもエンデューロレーサーって車検通るのか?」
と皆さん思うかもしれないですよね。
自分の場合は「普通に通りました」。
自分で車検場に持って行ってユーザ車検を通してきましたから。レーサーの車検取得では大きな声では言えない怪しいことをしているイメージがあるかと思いますが、そんな変なことはしてませんよ。
車検に困ってこの記事を読んでいる人もいるかもしれないのでちょっとだけポイントを紹介しておきます。自分が主に行った対策は大きく2つで、光量と排ガスについてです。
光量
ヘッドライトに関してはFE純正品はちょっと心許なく、通るか通らないか微妙なところでした。そこで自分が行ったのが701 enduroのヘッドライト流用です。
FEのものが12V 35/35wに対し、701は12V 60/55wとちょっとだけ明るいんですよね。そしてヘッドライトユニットはポン付け。車検にあたり知り合いの701乗りから拝借し取り付けて車検を受けました。結果問題なく合格。光軸は事前にテスター屋さんに持っていけば問題ないです。
あ、ウインカーなどの灯火類はちゃんと純正戻しましょうね。ミラーもどデカい純正品を付けておきましょう。
排ガス
問題は排ガスの方で…これが怪しいです。
FEは出荷状態でマフラーとエキパイの結合部に触媒がはめ込んであり、加えてエキパイにはO2センサーが刺さっています。ついでに公道用のマップにしてあり(公道マップじゃないとO2センサーが動かないらしい)、排ガス規制を通せる状態になってるんだとか。
でも大体のFEは出荷状態からチョメチョメしてフルパワー化してあり、触媒もO2センサーも外されている。かつマップも変わってる。だから車検にあたりそこを出荷状態に戻す必要があります。
自分はというと…触媒とO2センサーを入れただけで通りました。多分O2センサー動いてないけど。マップが書き換わってるはずなので通らないもんかと思ってましたが、なんでか通りましたね。事前にテスター屋さんに測定してもらった時点で大丈夫と言われていたのでそのまま本番に臨み、問題なく合格しました。
ということで自分は軽い整備のみで車検に合格しちゃいました。
2年に一回この儀式をするだけでヨンゴーのパワーを楽しめてしまうのであれば、自分としては全然許容範囲内です。車検があるというだけで食わず嫌いしている方もいると思いますが、実際そこまで負担ではないので是非大排気量レーサーも検討してみてください。
まとめ
総評:
ホントのデュアルスポーツってこういうコト。
頼れる兄貴的な何でもこなせるマッスルオフロードバイク。
良いところ
・特大のパワーと極太の低速トルクを併せ持つエンジン
・軽量級のレーサーとも張れるHED戦闘力
・パワーの余裕による高い巡行性能
・耐久性◎
悪いところ
・とにかく値段が高い(現行で新車160万円くらい)
・大排気量故の熱量
・レーサーの中で最重量級の車体
・振動の強さ
・ナンバー取得にあたり車検が必要
こんな人にオススメ
・一台でコース走行からツーリングまでマルチに遊びたい方
・4st250レーサーだとちょっと満足できなくなってきた方
・とにかくパワー!パワー is everything!という方
今まで複数のエンデューロレーサーをマルチな用途に使ってきましたが、その中でFE450は総合力において間違いなくナンバー1です。オフロードは最高。ハードでも戦える。ツーリングにも使える。耐久性も優秀。アクセル開ければ無敵のパワー。言うことないよね。
自分のように普段使いもツーリングもレースでも!とマルチな用途にレーサーを使用したいというニーズのど真ん中を打ち抜く車両です。本当に買ってよかったと思ってます。
少なくとも車検が切れるまでの2年間はこいつが相棒ですね。
その頃にはほかの車両が欲しくなってたりするのかな…いや、でもこの最高具合は手放したくないな~!
この記事を読んでちょっと興味を持ってしまったあなた。
ヨンゴーはいいぞ。
以上、インプレでした。